猫の腎臓病に関する重要栄養素リン、マグネシウム、オリゴ糖、カルシウム

猫に多い腎臓病の特徴を知って、愛猫の健康ケア・予防につとめましょう!

猫の病気で死因上位に入る腎臓病。
平均寿命が延びている一方で腎臓病は慢性的に徐々に進行することも多く、普段の食事や生活に気を配り、何気ない行動の中にあるサインを見逃さないことが大切です。ここでは腎臓病に関する知識や、健康に長生きしてもらうための情報を掲載しています。

猫の平均寿命と人間年齢換算表

平成27年、猫の平均寿命は15.75歳。平成23年の14.39歳から4年間で1.36歳も伸びています

猫は、私たち人間よりもずっと早く年を取っていきます。 猫の年齢11歳は人間の年齢で60歳と高齢に相当します。哺乳類ではどんな動物も種類にかかわらず、一生のうちに打つ心拍数は決まっていて、人間よりも心拍数の早い分寿命が短いといわれています。一緒に暮らす猫の年齢を知っておくことは体調管理のうえでも大切なこと。下表は一緒に暮らす猫の年齢のおおよその目安です。

猫と人間の年齢換算表

1ヶ月1才
2ヶ月3才
3ヶ月5才
6ヶ月9才
9ヶ月13才
1年17才
2年24才
3年28才
4年32才
5年36才
6年40才
7年44才
8年48才
9年52才
10年56才
11年60才
12年64才
13年68才
14年72才
15年76才
16年80才
17年84才
18年88才
19年92才
20年96才

猫の病気ランキング
腎臓病は病気ランキングの第2位(25%)

日頃から猫の健康維持のために、外見、食欲、飲水量や便と尿の状態や回数などを観察し、病気の早期発見や予防に努めることが大切です。また、飼い始める時は、年齢、飼育環境、健康状態などを把握するために、病院で検診を受けましょう。

  • 1位 癌(35%)人と同様、猫の高齢化に伴い増えています。原因は遺伝、環境面のほかホルモンやウィルスが関与するタイプのものもあります。皮膚やお腹の腫瘍は、日頃のスキンシップで気づけることも多々あります。顔などの一見かさぶたのように見えるような皮膚の異常も実は腫瘍というケースもありますので、治りが悪い場合は早めに病院へ行きましょう。
  • 2位 腎臓病(25%)猫の死因の第1位は腎臓病です。猫はもともと腎臓病になりやすいと言われています。尿量が増えてきたり、水を飲む量が多い場合は、腎臓病のほかさまざまな病気も考えられますので、一度動物病院でのチェックをしましょう。ダメージを受けた腎臓は元通りにはならないので早期発見が重要です。
  • 3位 心臓病(10%)猫の心臓病のうち、ほとんどは心筋症だと言われています。発症から数日で急激に病状が悪化することも多く、特異的な症状がないため、早期発見をするには病院での超音波等の検査が必要になります。

リラックスできる
自宅でチェックしてみましょう

せっかく病院に行っても、極度の緊張により十分な診察を受けられない猫もいますので、体調の変化に気づいてあげられるよう、自宅で体のチェックを行いましょう。

部位 チェックするべき点 考えられる疾患
目が曇っていないか 白内障
目の光の反射が強くないか(ギラギラしていないか) 甲状腺機能亢進症
眼球が落ちくぼんでいないか 脱水
耳、鼻、口まわりの皮膚の状態 皮膚病や腫瘍
口臭 腎臓病など
粘膜の色 白目の部分、歯茎の色 貧血や黄疸
被毛 ごわつきがないか 栄養状態や毛づくろいの有無
背中 背骨が程よく触知できるか 肥満、痩せてきていないか
痛みがないか 脊椎疾患
腹部 しこり等がないか 腹腔内腫瘍、乳腺腫瘍
手足 爪が伸びすぎていないか、触って痛くないか 関節炎

そもそも、腎臓病ってどんな病気?

腎臓の働き ・老廃物の排出
・体内の水分やミネラルの調節
・血圧の調節
・ホルモンの分泌
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腎臓病になると ・老廃物が排出できなくなることで尿毒症になる。
・脱水を起こす。
・血中のリン濃度の上昇が腎臓を更に傷つける。
・血圧調整ホルモンの過剰により高血圧になる。
・貧血をおこす。
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腎臓の構造 腎臓は図1のように糸球体や尿細管で構成されるネフロンという構造が約20万個集まってできています。
全身から腎臓へ運ばれた血液は糸球体でろ過され、その後尿細管で水分や必要な成分が再吸収されます。
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腎臓病とは 腎臓が本来の機能をしなくなることで、気怠さや吐き気を感じたり、尿毒症や高血圧などのさまざまな症状が現れる病気です。猫の場合、尿細管がダメージを受け水分の再吸収ができなくなるため、尿の濃度・色は薄くなり量が多くなります。多尿に伴い飲水量も増えるのですが、それ以上の水分が失われるため、脱水を起こします。また、腎臓のネフロンは常に全てが働いている訳ではなく、20%〜30%ずつ交代で働いているため、70%程のネフロンが機能しなくなった時点ではじめて症状として現れます。これが、腎臓病に気付きにくい原因です。
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腎不全の
年齢推移
猫の腎不全の年齢推移腎臓病は高齢猫に多い病気ですが、7歳くらいから増え始めます。7歳といえば人間でいうと40代半ばくらい。おうちの猫が7歳になったら、定期的な尿検査と血液検査を実施しましょう。
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腎臓病の症状 尿量増加 / 飲水量増加 / 嘔吐 / 貧血 / 脱水 / 高血圧
【猫と腎臓病の関係】 元々猫は砂漠地帯の生き物で、あまり水を飲まなくても腎臓で水分をしっかり再吸収できるという特徴があります。しかし裏を返せば、猫はもともと腎臓への負担が大きい動物であるといえます。伝染病などで若くして亡くなる猫が減ったことや、室内飼いの増加により猫の寿命が延びたことで、癌と同様に近年ますます腎臓病は増えています。

腎活1
腎臓病予防に大切なのは、食事と検査です

食事

猫は腎臓に負担がかかりやすい動物と言われていますが、日頃から水分をたくさん取ることで負担を軽くしてあげられます。缶詰やレトルトパウチなどのウェットフードを与えることでドライフードに比べ、1日の水分摂取量が増えることがわかっています。また、リンナトリウムの数値を低くしている成分に配慮した食事を与えることも重要になります。腎臓機能が低下すると、リンが排泄されにくくなり、そのリンが腎臓を傷つけ、さらに腎臓病を悪化させます。また、腎臓機能の低下で塩分と水分の調整がしにくく血圧が上がりやすくなり、血圧上昇はさらに腎臓への負担を増やします。このため、食事中のリンと、血圧上昇に関係するナトリウムを制限することが大切です。

血液検査 ¥2,000〜

腎機能が低下すると毒素や老廃物が排泄できなくなり、血液中の以下の数値が上昇します。

尿素窒素(BUN) 蛋白質がエネルギーとして使われた後の代謝産物(残りカスのようなもの)で、腎機能が低下することで排泄されづらくなる毒素のひとつです。数値が高くなると吐き気や食欲低下を起こします。
クレアチニン(Cre) 筋肉の運動によりできる代謝産物で、体の筋肉の付き具合により基準値も変わります。腎機能の指標のひとつとして用います。
リン(P) 身体を構成するために必要不可欠な物質ですが、腎機能低下に伴い上昇します。

尿検査 ¥1,600〜

本来尿中に現れない物質の有無や、尿中の細胞のチェックを行います。血液検査よりも早い段階での異常を発見できるため、特に健康診断では尿検査を行うようにしましょう。

比重 尿の濃さを表しており、数値が低いほど濃縮能力が低下していることになります。測定には1日のうちで最も比重の高い朝の尿が理想的です。
尿タンパク 腎機能の低下に伴って尿中に蛋白が漏れ出てきます。(正常でも微量の蛋白は検出されます。)蛋白により痛んだ腎細胞をさらに傷つけることにもつながります。
尿タンパククレアチニン比(UPC) クレアチニンと比較して尿蛋白を測定することで、より正確に腎機能を検査する方法です。

エコー検査 ¥2,000〜

腎臓のサイズ、構造などの異常がないか確認できます。

腎活2
病院に持って行く尿を自宅で採尿しましょう

最も正確に尿検査をするには、病院での「膀胱穿刺」という方法がありますが、自宅で採尿する場合、以下の方法があります。

尿をそのままトレーなどに受け取る

おしりの下にサッとトレーを置いてあげます。嫌がる子には無理をしないようにしましょう。

トイレ砂の量を減らす

砂の量を極端に減らし、砂が尿を吸収する前にスポイトで採る。
2段式トイレの場合も、上段の砂の量を減らし、下段のペットシートを除いて置き、トレーに溜まった尿を採取する。

シートでおしっこをする場合

ペットシートをひっくり返しておき、ビニールの面でおしっこをしてもらう。

★採取したらその日のうちに病院に持って行きましょう。時間が空くようであれば冷蔵庫などで保管しておきましょう。
★10cc以上の量が理想的ですが、少ない量しか採れなくてもできる検査はあるので、病院に確認してみてください。

腎活3
猫に与える水の適量と与え方

飲水の適量

一日に必要な水分摂取量

3kg159cc
4kg196cc
5kg233cc
6kg266cc

ここからフードに含まれる水分量を引いた分が1日の飲水料ということになります。

食事ごとの実際の飲水量目安

ドライフードの場合90 - 170ml/日
ウエットフードの場合5 - 85ml/日

主食がドライフードであれば200ml以上、ウエットフードの場合は100ml以上…飲んでいるのであれば「多飲」ということになります。

ウエットフードとドライフードではかなり差があります。また、季節・温度・個人差(個体差)食事の種類によってもかなり違ってくるので、病気になる前から日頃の飲水量を把握しておくことをおすすめします。

飲水量の計り方

毎日同じ時間に水替えをし、その都度お水の量をはかるというのが一般的な方法です。200ccを超えてくるようなら、腎臓病を含めさまざまな病気が考えられますので、動物病院に相談しましょう。

飲水の与え方

新鮮な水をいつでも飲めるようにしておきます。市販されているミネラルウォーターで、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが入った硬水は尿石ができやすくなるので猫には好ましくありません。基本的には、衛生的な水道水ということになります。

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もしも腎臓病になってしまったら

動物病院で腎臓病と診断されたら、症状を和らげたり、病気の進行を防ぐため、療法食への切替えやお薬が必要になります。 昔に比べ療法食も食べやすくなっていますが、好みに合わなかったり飽きてしまったりと食べてくれない時があります。そういった時のために、療法食以外の腎臓ケアに配慮されたものを探しておくとよいでしょう。特に水分の多いウェットタイプがおすすめです。

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ウエットタイプのご飯の与え方

  • お薬を混ぜる

    完食しない場合もあるので、いつものフードを与える前に少量の缶詰やペーストにお薬を混ぜ、全部食べたのを確認してから続きを与えてください。お薬の苦手な子にはお薬入りペーストを歯茎に塗りつける方法もあります。
  • 療法食にかける・混ぜる

    療法食を食べない、また飽きてしまった場合などにかけたり、混ぜたりして与えてみましょう。
  • 療法食の横に添える

    ドライとウエットを混ぜるのを嫌がる子もいます。同じお皿に添えて置くことで、飽きてしまったいつものご飯をウェットタイプと一緒に食べてくれる場合があります。

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