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【獣医師監修】猫が水を飲まないときの対処法 ~原因から解決策まで詳しく解説~

2024.10.1
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「うちの猫が水を飲んでいないかも?なんだか心配…」と思ったことはありませんか?猫は、もともと水をあまり飲まない動物だといわれています。とはいえ、全く水分を摂らなくてよいわけではありません。健康を維持するためには、適切な水分補給が必要です。
飲水量が不足すると、脱水症状をはじめ、様々な病気にかかるリスクがあります。この記事では、猫が水を飲まない原因と解決策についてご紹介します。

アイシア 「猫の育て方」編集部監修

アイシア(株)在職で商品開発にも携わり、臨床経験もある獣医師が所属している「猫の育て方」編集部。商品開発などのお仕事を通して、猫の健康的な生活について考えているメンバーが揃っています。

INDEX

猫が一日に必要とする水の量と量り方

通常、猫は一日にどれくらいの水分を必要とするのでしょうか。また、猫がどれくらい水を飲んだかを量る方法はあるのでしょうか。

猫はもともと少量の水しか飲まない?

猫は、もともとあまり水を飲みません。その理由は、どうやら猫のルーツに関係があるようです。猫の祖先は、中東の砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコだといわれています。砂漠では自由に飲める水が少ないため、猫の体は水分が少なくても機能するように進化してきたのです。


猫が一日に必要とする水の量

猫が一日に必要とする水の量は、ガイドラインによると、DER(一日エネルギー要求量:kcal/日)とほぼ等しいとされています。猫のDERは、1.2×70×(猫の体重)0.75で計算されます。

例えば、体重が5kgの猫であれば、DERは約280kcalとなり、一日に約280ml程度の水分を与えればよいことになります。

必要な水の量は、気温など様々な要因によって左右されるため、上記の式で算出される水の量は一つの目安です。基本的には、猫が好きなときに自由に水を飲むことができる環境を用意するのがよいとされています。


猫が飲んでいる水の量の量り方

では実際に、猫の飲水量を把握するにはどうしたらよいのでしょうか。その量り方はとても簡単です。最初に容器に注いだ水の量を量り、水を交換する際に、容器に残っていた水の量を最初の量から差し引くことで、飲水量を測定できます。猫の体調がよいときに数回測定して、普段の飲水量の目安を把握しておくと、猫が体調を崩したときなどに参考になるでしょう。

猫が水を飲まないのは病気が原因の可能性もある

猫は、病気が原因で水を飲まなくなることもあります。例えば、歯肉炎や歯周病、口内炎などを発症した場合、口の中の痛みによって、水が飲めなくなることがあります。
その他には、関節の病気などで、首や腰に痛みがあり、水を飲むときの前かがみの体勢が取れない場合もあります。水を飲めなくなってしまうと、猫の体に様々な悪い影響が出るおそれがあるため、早めに動物病院を受診しましょう。


逆に飲水量が増えたときに考えられる病気

逆に、やたらと水を飲み、尿の量が増える(多飲多尿)という場合にも、病気の可能性があります。多飲多尿になる病気で、最も多く見られるのは慢性腎臓病です。他にも、腎臓の病気(腎盂腎炎など)、ホルモンの異常の病気(糖尿病、甲状腺機能亢進(こうしん)症、クッシング症候群、尿崩症など)、電解質異常(高カルシウム血症)などが考えられます。また、ストレスによって一時的に飲水量が増え、尿の量が増えることもあります。

病気以外で考えられる猫が水を飲まない原因

猫が水を飲まない原因は、病気以外ではどのようなものがあるのでしょうか。

水のにおいや味が猫にとって好ましくない

水のにおいや味が、猫の好みに合わない場合、水を飲まないことがあります。家庭では水道水を与えることが多いと思いますが、中には水道水のカルキ臭を好まない猫もいます。


器の数が少ない(器の置き場所が気に入らない)

においの話にも関連しますが、他の猫が口をつけた水は唾液がついてしまい、それが嫌で水を飲まなくなる猫もいます。多頭飼いの家では、猫の数以上の飲み水を用意し、複数の場所に設置しましょう。また、トイレの近くに水を置くと、トイレから発生するにおいが気になって、水を飲まなくなることもあるようです。


ストレスや環境の変化

猫は「いつもと同じ」を好む動物です。引っ越しや室内の模様替え、家族構成の変化、新しいペットを迎え入れたなど、様々な生活環境の変化や、室温、騒音などによるストレスも、水を飲まなくなるきっかけになる可能性があります。猫が新しい環境に慣れるまでの間、一時的にストレスを感じることはやむを得ないかもしれませんが、ストレスが最小限になるように配慮したいものです。


季節が原因

猫が水を飲まない原因には、季節による影響も考えられます。秋~冬にかけては、活動量が低下することで、夏場に比べると喉が渇きにくくなり、猫の飲水量が減少するようです。冬の暖房による乾燥、脱水症状にも注意しましょう。

猫が水を飲まないときの対処法

猫が水を飲まない場合は、何らかの病気が原因の可能性も考えられるため、まずは動物病院を受診しましょう。病気の場合は、獣医師の指示に従い、適切な治療を受けることが大切です。

一方で、現時点では猫の体に異常が見つからなかったという場合でも、油断はできません。水を飲まない状態が続くと、将来的に病気にかかるリスクがあるからです。猫に水を飲んでもらえるように、水の与え方を工夫しましょう。

①新鮮な水の提供

猫に与える水は、一日に数回は取り換えて、いつでも清潔な水を飲めるようにしておきましょう。古い水を放置すると、雑菌が繁殖して臭いの原因になり、衛生的にも好ましくありません。水を取り換える際には、毎回、器もきれいに洗いましょう。

  • 好みの水を見つけてあげる

    水にも様々な種類がありますが、できるだけ、猫の好みの水を与えるようにしましょう。 水道水のカルキ臭が苦手な猫の場合は、カルキ臭を抑えるため、木炭や竹炭を水道水に入れる、水を一度沸騰させて、冷ましてから与えるなどの方法もあります。

  • 猫に飲ませたくない水

    猫に飲ませたくない水もあります。
    例えば、花瓶の水は、様々な有害物質(花粉や根、茎、葉の成分)が溶け出しているため、与えてはいけません。特にユリ科の植物は、猫にとって猛毒で、微量でも命にかかわるため要注意です。塩分などの調味料を含む食べ物のゆで汁も、猫の体に負担がかかるため、控えた方がよいでしょう。

    また、ミネラルを多く含む硬水は控えた方がよいでしょう。明確な研究結果が示されているわけではないものの、硬水には尿路結石のリスクがあるといわれています。


②水の置き場所と器の工夫

猫が好きなときにいつでも水を飲めるよう、水は複数の場所に置くようにしましょう。水を入れる器の材質や形も様々です。どんな器でも、あまり気にせず水を飲んでくれる猫もいる一方で、気に入った器でないと飲まない猫もいるようです。できるだけ、猫の好みに合った器を使うようにしましょう。

器の幅や高さが猫の体に合わないと、顔やヒゲが器に当たったり、首に負担がかかったりして、水を飲みづらいこともあります。広めの器や、高さのある器を利用するなどの工夫も必要かもしれません。

  • 自動給水器(ウォーターファウンテン)の利用

    汲み置きした水ではなく、流水式の給水器を好む猫もいます。自動給水器を試してみるのも一つの方法です。自動給水器には、循環式とつぎ足しタイプがあり、いつでも新鮮な水を与えることができます。特に循環式給水器は、モーターにより水が循環し、フィルターでろ過されたきれいな水を飲むことができ、衛生的です。

    水道の蛇口から直接水を飲みたがる猫には噴水タイプや湧き水タイプがおすすめです。 たくさんの種類のものがあるので、猫が飲みやすい高さかどうか、猫のヒゲが当たらない大きさか、静音性や飼い主にとって手入れしやすいものかどうかなど、チェックしながら検討しましょう。


③水分補給できる食事と合わせる

一日に必要な水分量を、飲水のみで補給するのは難しい場合もあります。ウェットフード、スープ、水分量の多いおやつなどを利用して、食事と合わせて水分補給をするのがよいでしょう。

猫が水を飲まないことのリスク

猫が水を飲まないと、どのようなリスクがあるのでしょうか。

脱水を起こす

猫が水を飲まないことで起こり得る危険の一つに脱水が挙げられます。脱水は体内の水分や電解質が不足している状態のことです。脱水状態になると体が適切に機能しなくなり、最悪の場合は死に至ることもあります。

  • 脱水の原因

    脱水になる原因には以下のことが考えられます。

    • 十分な量の水を飲まない
    • 食欲不振によって必要な水分が摂れない
    • 嘔吐や下痢が続き体内の水分が失われた
    • 多尿になるような病気(慢性腎臓病や糖尿病など)にかかった
  • 脱水症状のサイン

    ほとんどの猫は、約5% 脱水するまで脱水症状が見られず、脱水状態にあるかどうかを見極めるのは難しいです。ですが、以下のサインが見られたら、脱水症状が起こっている可能性があります。よく観察してみましょう。

    • 口腔内が乾燥したり、ねばねばしたりする
    • 毛並みが悪くなる
    • 尿量が減る ※ただし、病気で尿量が多い場合もある
    • 目が窪む
    • 反応が悪く、ぐったりしている
  • その他、脱水症状を調べる方法

    脱水症状を確認する方法に、皮膚つまみ試験があります。猫の首から肩あたりの、よく伸びる皮膚をつまんで持ち上げます。皮膚がすぐに戻る場合は、脱水症状ではありませんが、数秒かけてゆっくりと皮膚が戻る場合は、脱水症状を起こしているかもしれません。


病気の原因になる

日常的に猫の飲水量が少ない場合、尿路結石症や膀胱炎などの尿路系の病気にかかるリスクが上昇します。

尿路結石症や膀胱炎の主な症状は、血尿、排尿時の痛み、排尿姿勢を取っても排尿ができない、などがあります。適切な処置をしないと、尿道閉塞が起こり、命にかかわる危険もあります。猫の排尿時の様子に異常が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

定期的な健康チェックが必要

日頃から猫の様子を観察し、定期的に健康チェックを受けることが大切です。猫の飲水量、尿量、排尿時の様子に異常はないか、普段から注意することで、病気の予防、早期発見に繋がると考えられます。
また、現時点で目立った症状がない場合でも、定期的に動物病院で尿検査や血液検査を受け、健康状態を把握しておきましょう。

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