【獣医師監修】猫の適正体重はどのくらい?肥満・削痩の判断基準、体重管理を解説
愛猫の体重管理の方法がわからない…と不安に感じたことはありませんか? 猫の体重や体型、食事量の管理は、猫の健康維持のため生涯を通しとても重要なことです。本記事では、猫の体重の測り方や適正体重について、そして、肥満猫の具体的なダイエット方法、さらに子猫の時の体重管理方法も一緒に紹介していきます。
-
アイシア 「猫の育て方」編集部監修
アイシア(株)在職で商品開発にも携わり、臨床経験もある獣医師が所属している「猫の育て方」編集部。商品開発などのお仕事を通して、猫の健康的な生活について考えているメンバーが揃っています。
- INDEX
猫の適正体重は?
体重は健康のバロメーターといっても過言ではありません。愛猫の適正体重を知ることは、健康維持と病気の予防のためにとても重要です。まずは愛猫の適正体重を押さえましょう。
猫の体重の測り方
自宅で猫の体重を測る習慣を身につけましょう。成猫では月1回以上、子猫や高齢猫、持病のある猫は、週1回以上測定するのがおすすめです。
体重を測る時は、100g単位まで測れる体重計を用意します。体重計に猫が直接乗ってくれると助かるのですが、動き回ることが予想されます。そこで、猫を抱っこして体重を測定し、飼い主さんの体重を差し引いて猫の体重を出しましょう。
猫が、キャリーケースやベッドにいれば、そのまま体重計に乗せて測るのも方法のひとつです。この場合も、後でキャリーケースやベッドの重さを差し引きましょう。
適正体重は?BCSとMCS
一般的な成猫の体重は3~5kgが平均的です。しかし、人に個人差があるように、同種の猫でも体格の大きな子もいれば小さな子もいます。一般的に示されている平均体重はあくまで目安となります。そこで覚えておきたいのが、「BCS」と「MCS」という指標です。
-
BCSは体脂肪を評価する指標
BCSはボディコンディションスコアといい、「痩せ」から「肥満」までを段階に分けて数値化する測り方です。9段階に分けることもあれば、5段階に分けることもあります。5段階の場合は真ん中の3が標準体型です。愛猫のあばら辺りを触ってどれくらい骨が触れるか、どれくらいお腹がくびれているかなど、触った時の状態や見た目によって評価します。
- BCS1:痩せ
- 肋骨、腰椎、骨盤が外から容易に見える。首が細く、上から見て腰が深くくびれている。
横から見て腹部の吊り上りが顕著。脇腹のひだに脂肪がないか、ひだ自体がない。
- BCS2:やや痩せ
- 背骨と肋骨が容易に触れる。上から見て腰のくびれは最小。横から見て腹部の吊り上りがある。
- BCS3:理想体重
- 肋骨は触れるが、見ることはできない。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれがわずかに見られる。横から見て腹部の吊り上り、脇腹にひだがある。
- BCS4:やや肥満
- 肋骨の上に脂肪がわずかに沈着するが、肋骨には触れる。横から見て腹部の吊り上りはやや丸くなり、脇腹のひだも脂肪で垂れ下がって歩くと揺れるのに気づく。
- BCS5:肥満
- 肋骨や背骨は厚い脂肪におおわれていて容易に触れない。横から見て腹部の吊り上りは丸く、上から見て腰のくびれはほとんど見られない。脇腹のひだが目立ち、歩くと盛んに揺れる。
なお、愛猫の健康維持・体重管理のため現在の体重とBCSから理想体重を正確に算出したい場合は、獣医師に相談するようにしましょう。
-
MCSは筋肉の量を評価する指標
MCSはマッスルコンディションスコアといいます。その名のとおり筋肉の量を評価する指標です。身体の各部分の筋肉を指で圧迫して、どれくらいくぼむかどうかで、筋肉の付き具合を把握します。獣医師に聞いて、実際に愛猫を触りながら確認してみるのがおすすめです。
太りやすい猫とは?猫の肥満の原因・リスク
人と同様に、猫にも太りやすい体質の猫がいます。また、生活スタイルによっても太りやすくなってしまうため、注意が必要です。
肥満の原因
猫の肥満の原因には、運動不足や食事量、遺伝や病気などさまざまなものがあります。運動不足の面からいえば、室内飼いの猫は外猫より運動量が少ないため肥満になりやすいです。食事量の面では、若い頃と同じ食事量を与えていてカロリーがオーバーしているケースや、かわいいからといって制限なくおやつを与えてしまっていることも原因として考えられます。愛猫を肥満にしないためには、毎日の適切な食事管理と適度な運動をサポートしてあげる必要があります。
-
避妊・去勢手術をした時は要注意
避妊・去勢手術をした後は、ホルモンバランスの変化などで基礎代謝が低下したり、食欲が増したりすることで太りやすくなることがあるので注意が必要です。手術後は定期的に自宅で体重を測り、太る傾向があれば早めに避妊去勢手術後用のカロリー設計がされたフードに変更しましょう。
肥満が引き起こすリスク
人と同様、猫の肥満もさまざまな病気を引き起こすリスクを高めます。肥満になると糖尿病発症リスクが高まります。また12歳以上の高齢猫の9割以上が関節炎(変形性関節症)であるといわれており、それが肥満猫の場合は重い身体を支える関節に余計負担がかかります。猫にとって肥満が健康に与える影響は深刻です。身体が重くなると運動量が減少し、どんどん肥満が進行してしまうという悪いサイクルは、身体への負担をより大きくしていきます。
痩せ過ぎている猫とは?
肥満とは逆に、痩せすぎも猫の健康に悪影響を及ぼします。
削痩の原因
削痩の主な原因には病気や栄養不足、ストレスなどがあります。特に高齢の猫や病気の猫は食欲が減ったり、栄養を上手く吸収できなくなるため痩せやすいです。なんだか最近痩せてきたと感じたら、ご飯の見直しはもちろん、早期に獣医師の診察を受けることが重要です。
削痩が引き起こすリスク
愛猫を痩せた状態のままにしておくと、筋力が落ちて体力がなくなり疲れやすくなります。さらに悪化すると免疫力の低下により感染症にかかりやすくなり、注意が必要です。
猫の体重管理は食事の見直しから
猫の体重管理で重要なのは食事です。食事の栄養バランスと量を考えてあげることが健康への第一歩になります。
食事の量を見直す
猫が太ってきた、痩せてきたと感じたらまずはフードの量を確認してみましょう。与えている量と商品に記載されているカロリーから、猫が摂取しているカロリー量を把握し、それが猫にとって適正給与量なのかチェックしてみてください。
食事量を調整してダイエットをする際には、じっくり時間をかけて行うことが重要です。決して絶食や食事量を急に減らすようなことはしないで、1週間で初期体重の0.5~2%を目安に体重を減らし、徐々に目標体重に近づけていくようにしましょう。
-
肝リピドーシスとは?
太り過ぎの場合、無理な減量をした時や絶食状態が続いた時は、肝機能障害を引き起こす病気「肝リピドーシス」になる恐れがあります。適正カロリーや目標体重は獣医師に相談のうえ算出した方が安心です。
肝リピドーシスとは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積することで肝機能障害を起こす病気です。治療しない場合ほとんどの猫は死に至ります。
食事の種類を見直す
猫のダイエットを食事で行う場合は、前述した量を減らす方法の他に、食事の種類を変える方法もあります。特に食事の量を減らしたら常にお腹を空かせている、という猫にはダイエットフードという選択肢もあります。フードを切り替える際には急に変えず、1~2週間程度かけて徐々に変えてください。
食事の与え方の注意と工夫
かわいいからといって、ついおやつを与え過ぎてしまってはいませんか?家族の中でひとりでもそのようなことをする人がいると、ダイエット計画は台無しです。ダイエット中は食事量をきちんと把握しておくことが重要です。食事を与える人が複数いる場合は、何グラム与えたら良いかを全員で共有して与え過ぎに注意しましょう。
多頭飼いの場合は、他の猫の食事を横取りしていないか、または横取りされていないか注意が必要です。どれくらい食べたかを把握できるように、他の猫とは別部屋で食べさせたり、置き餌はしないで食べ残しは片づけるようにするなど工夫しましょう。
適度な運動
食事の管理と同様に適度な運動もとても重要です。たとえば、フードを穴に入れ動かして出てくるような知育おもちゃで遊ばせたり、飼い主さんが自らおもちゃを片手に持って運動を促すなど、生活の中にさりげなく運動を取り入れるのもひとつの方法です。
猫とのスキンシップも体重管理に影響
日々の愛猫の体型の変化をしっかりと把握するために、スキンシップも大事な体重管理の方法です。猫自身も大好きな飼い主さんとのふれあいは心身の健康に繋がります。猫との日常のふれあいを大切にしながら体重管理しましょう。
子猫から成猫(1歳)に成長するまでの平均体重と食事
成猫になるまでの成長期の食事は、猫が健康で丈夫な身体を作るうえでとても重要なものです。成猫になるまでの体重と一般的な食事量や回数を参考に、愛猫の成長をしっかり管理していきましょう。
月齢と体重の目安
生後1ヶ月~12ヶ月までの体重は以下になります。猫の種類や体格などによって適正体重には個体差があるので、あくまで目安と捉えてください。
月齢 | 体重(オス) | 体重(メス) |
---|---|---|
生後1ヶ月 | 300g~600g | 150g~400g |
生後4ヶ月 | 1.6kg~2.5kg | 1.2kg~2.0kg |
生後6ヶ月 | 2.6kg~3.5kg | 2.0kg~2.6kg |
生後9ヶ月 | 3.3kg~4.4kg | 2.4kg~3.2kg |
生後12ヶ月 | 3.7kg~4.7kg | 2.6kg~3.3kg |
猫は1歳になると、人間だと18歳程度に相当する成猫となります。猫によってはまだ成長が続く場合もありますが、ほぼ成長が落ち着きます。子猫の体重は、成長管理をするうえでとても大切です。こまめに測って記録するように心がけましょう。
子猫に与える食事の回数・量
子猫に与える給与量は、与えるフードの種類によって異なるため、パッケージに記載されている推奨給与量やカロリーを参照するようにしましょう。
給与量と食事の回数は体重を計測しながら子猫の成長段階(月齢)に合わせて調整していきます。一例としてドライフードの『MiawMiawカリカリ小粒タイプ子ねこ用』で見ていきましょう。
体重 (kg) |
離乳 ~4ヵ月 |
4 ~9ヵ月 |
9 ~12ヵ月 |
---|---|---|---|
0.5 | 40 | 35 | - |
1.0 | 65 | 55 | 45 |
1.5 | 85 | 70 | 55 |
2.0 | 100 | 85 | 70 |
3.0 | 130 | 110 | 90 |
4.0 | - | 135 | 105 |
5.0 | - | - | 125 |
上の表の各ライフステージの特徴は次のとおりです。
離乳~生後4ヶ月頃まで
この期間は食欲旺盛ですが、まだ胃が小さく一度に少量ずつしか食べることができないので、1日4~6回に分けて与えていきましょう。
生後4ヶ月~9ヶ月頃まで
生後4ヶ月を過ぎると、乳歯が永久歯へと生え変わります。体重は1週間に100gのペースで増加し、ぐんぐん身体が大きくなる時期です。
生後9ヶ月~12ヶ月頃まで
この頃になると、子猫の身体は成猫と変わらないくらいの大きさになりますが、内臓や骨、筋肉などまだ成長途中です。生後12ヶ月くらいまでは子猫用フードを与えてください。食事の回数は1日2~3回へと減らすことができ、成長が落ち着くので必要なエネルギーが減り、生後4~9ヶ月頃に比べると給与量も減っていきます。
猫の体重管理は重要
肥満だと思っていたら、実は病気が隠れていることもあります。何らかの原因でお腹に腹水が溜まると、お腹が張って太っているように見える場合があります。また、体の中に大きな腫瘍がある場合も、外見上太って見える場合があるため注意が必要です。日頃から体重を測り、体型を把握して些細な変化を見落とさないことが大切です。